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コラム

墓じまい
終活について

墓じまい

「墓じまい」という言葉が広がりをみせている。墓を継ぐ人がいないなどの理由で、現在の墓が将来、無縁墓となって荒れてしまうことを防ぐため、墓を閉じてしまうことを意味する。だが、「先祖供養を放棄する」といったイメージが先行している部分もあり、墓石業者らが正しい理解をしてもらいたいと呼び掛けている。

○「離檀料」も
 「墓じまい」という言葉の誕生は新しい。最初に用いたのは平成21年、大阪の霊園開発業者「霊園・墓石のヤシロ」の八城勝彦社長だといわれている。同社では「今ある墓を処分して、新たに供養する」ことを「墓じまい」と呼び始めた。
 全国的に広がったのは翌年以降。全国紙の新聞記事データベース検索で調べると、「墓じまい」という言葉が最初に使われたのは22年8月。じわじわと広がり、26年頃からはテレビなどでも盛んに取り上げられるようになったようだ。
 同時に、「離檀料(りだんりょう)」という言葉も使われるようになった。寺の境内にある墓を閉じて、遺骨を移す際に、寺から「檀家(だんか)を離れるための料金」という名目で布施を求められることをいう。実際の墓じまいが増えたために、「離檀料」も広がったとみられる。

○正しい理解呼び掛け
 ただ、「墓じまい」という言葉はともすると「墓を閉じて、供養を放棄すること」と誤解されがち。とりわけ昨今の「終活ブーム」の中では、墓や葬儀など供養に関するものすべてについて「簡素」「簡略」が良いことと考える人が多く、さらに、墓はないほうがよいと思う人も増えている。墓石業者などには「今ある墓を閉じて、供養は終わりにしたい」といった相談が少なくない。
 先祖供養を軽んじた理解が広がることに危機感を持った業界団体「全国石製品協同組合」は27年11月、「改葬」や「墓じまい」に関して見解を発表した。(1)既に建っているお墓から遺骨を取り出す(2)もとの墓を撤去し更地に戻す(3)新しい墓地に墓を建てる(4)遺骨を納める-という4つの流れを「改葬」とした。「墓じまい」は、(2)の部分だけを指し、改葬をする一連のプロセスのひとつと位置付けて、正しい理解を呼び掛けている。

○実は遺骨の引っ越し
 本来の「墓じまい」のあと、遺骨はどうされることが多いのか。一般に挙げられるのが、遺骨を供養する場所を引っ越しするケースだ。(A)遺骨だけでなく墓石まで丸ごと、新しい霊園に移転する(B)遺骨だけをすべて移転する(C)複数ある遺骨(骨壺(つぼ))から、その一部だけを移転する(D)分骨(骨壺の中の遺骨の一部だけを移転)する-という4つのパターンだ。メモリアルアートの大野屋が、実際に改葬をした顧客362人を対象に26年に実施した調査では、(B)が最も多く57%、(A)が29%だったという。4つのパターン以外に、最近では永代供養墓(承継者がいなくなることを前提にした墓)や散骨などのケースも増えている。
 少子化など人口動態の変化を背景に、墓じまいの関心は今後も高まるのは確実。供養の気持ちだけは忘れないようにしたい。(『終活読本ソナエ』冬号の特集「お墓の引っ越し」から)

産経新聞2017.02.24より

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