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増加しさまよう無縁遺骨 高齢者孤立、困窮・・・自治体対策へ動く
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増加しさまよう無縁遺骨 高齢者孤立、困窮・・・自治体対策へ動く

○増加しさまよう無縁遺骨 高齢者孤立、困窮・・・自治体対策へ動く
産経新聞 2017年9月24日掲載
東京都板橋区の集合住宅で10柱以上が見つかった、引き取り手のない「無縁遺骨」は全国的に増加傾向にある。単身の高齢者世帯の増加や、貧困層の拡大などの要因が背景にあるとみられ、葬儀費用を公費で賄うケースも増えている。無縁仏の増加により、費用負担の増大や遺骨の保管場所の不足などの問題も顕在化しつつあるといい、自治体も対策に動き始めている。
 厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者の単身世帯は平成28年現在で約655万世帯で、19年の約432万世帯から約1・5倍に増加。一方で、生活保護を受給する高齢者世帯は、17年度の約45万世帯から、27年度は約80万世帯に約1・8倍に急増している。
 高齢者の貧困と無縁死の関係に詳しい第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部の小谷みどり主席研究員は、「生活保護を受給する高齢者は親族との関係が乏しかったり、親族も金銭的に困窮しているケースが多い」と説明、こうした状況が無縁死に結びついていると指摘する。
 生活保護受給者自身が死亡して引き取り手がない場合や、葬儀を執り行う人が生活保護受給者の場合、葬儀費用を「葬祭扶助」で賄うケースも多く、葬祭扶助の受給世帯数(年度累計)も17~27年度の10年間で、約2万6千世帯から約4万世帯に増加。支給額は自治体により異なるが、1人当たり最大20万円程度で、葬祭扶助費は多くの自治体で増加傾向にある。
 自治体は遺骨の保管場所不足などの問題にも頭を悩ませている。東京都葛飾区では1柱1万円で遺骨の保管を寺に委託しており、引き取り手を待つ期間を3年間としていたが、「寺からも、『年によっては数が多く、収納場所にも限りがある』という声がある」(同区の担当者)ことなどから、23年度から保管期間を2年間に短縮した。
 神奈川県横須賀市では、生活に余裕のない高齢者を対象に死後の手続きなどを支援する「エンディングプラン・サポート事業」を27年7月から開始。高齢者自身が市内の葬儀社と生前契約を結び、葬儀の希望を伝えて最低限の費用を預けておく仕組みで、市は納骨までを見届ける。
この事業の実施などにより、26年度に60体あった身よりのない遺体の取り扱いは、27年度には34体に減少。葬祭費も約1200万円から約700万円に減少した。同市生活福祉課は「市民の尊厳を守りながら財政的課題を解決できる可能性がある」と期待を寄せる。

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