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コラム

上海~「死亡体験館」に予約殺到~
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上海~「死亡体験館」に予約殺到~

熱風と炎の映像で“火葬”→胎内通って再び“誕生”若い世代に大人気



【上海=河崎真澄】中国で9万人近い死者と行方不明者を出した8年前の四川大地震で被災地ボランティアを経験した男性らが、上海市内で一般の人に「死亡と誕生」を疑似的に体験してもらう施設を4月にオープンし、若い世代からの入場予約が殺到している。
 異例のシミュレーション施設「4D死亡体験館『醒来』」の入場料は1人444元(約7500円)。参加枠は1日24人まで。20~30代の中国の若者を中心に問い合わせが相次ぎ、すでに6月分まで満席でキャンセル待ちとなっている。
 初対面の12人が家族の死や自分の悩みなど身近な問題について、さまざまな角度から議論。その上で“火葬場”に運ばれ、炎の映像と全身を包む熱風や、激しい音で“火葬”を体験。さらに母親の胎内を模したトンネルを通って、再び“誕生”する3時間の旅だ。
 議論の過程や“火葬”の最中に泣き叫んだり気を失いかけたりする参加者もいるという。“火葬”を体験した10代後半の中国人男性は、「高校を中退して人生に悩んでいたが、生きる力をもらった」と話した。
 運営責任者の1人は四川大震災で被災地ボランティアを行った黄衛平氏(46)。かつてビジネスで成功したが麻薬に溺れ、死のふちをさまよった経験をもつ。
 そのころに起きた震災の現場に入った黄氏は、家族を亡くした人たちへの支援などを行ううちに「死生観」が変化した。その後、上海のホスピスで働き、意気投合した丁鋭氏(43)らと生命教育に関する非営利団体を設立。「死を通じて生命の大切さを実感する」ための施設を思いついたという。
 4年前から約400万元を投じて準備し、開設にこぎ着けた。黄氏らは「死亡体験館」で今後、医療関係者や警察・消防、葬儀業界関係者など、「死」が身近な職業の人たちへの心理ケアも行っていく考えだ。

2016.04.29産経新聞より

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